「うつ病」というのはわかりにくいものです。

「いかにも病気」な人もいるし「不幸やストレスに打ちひしがれてる状態」のような人もいる。

「身体的に無理をかけて」なった人もいれば、「心が傷ついて」なる人もいる。

作品中にもあるように、現在よく使うDSM-IVの診断基準では原因は考えず、症状と期間で診断するので

いろんな人が「うつ病」(大うつ病性障害)のくくりに入るわけです。

(私が医学部生の時の授業では「内因性うつ病」だけを「うつ病」と指してたはずですが、研修医になるとDSMを

使うように指導されました・・・納得できない気持ちがありましたが・・。)

いろんな人がいるので、みんな一律に「薬と休養」で治るわけありません。

薬と休養はバイオ(身体)に働きかけるものですが、薬物療法と休養をしていても、何か月もゴロゴロした生活を

続けていてはバイオがよくなるはずないし、バイオを良くする努力をしても、「後悔や恨みや心配」を一日中考えて

いてはサイコ(心理)がよくならない。ソーシャルに不幸な人はバイオやサイコを良くする意欲は起きにくい・・。

これまで「うつ病は薬で治る」「うつ病治療には薬が必要」と言われてきましたが、特に軽症うつ病(MDD)に関して

は薬物療法とプラセボ(偽薬)との差があまり出ない、という報告がいくつか出され、各国でガイドラインの見直しが

進みました。そこで日本でも2012年に新しくガイドラインが作られたわけです。

このガイドラインには「軽症うつ病の治療の基本は・・支持的精神療法と心理教育を行うことにある。」とあります。

支持的精神療法って何をするの?に関しては、これは各医者でやり方が違うでしょうが、私は①健康因子を増や

す②悪化因子を減らす③リハビリ・・の支援だと解釈しています。

薬の効果が弱い以上、MDDからの回復には自己治癒力を生かすのが重要です。

そのためには患者さんや家族も、医者と同じくらい知識を持って、共に取り組んでもらうが必要と思います。

このマンガでは「うつ病って何か」「健康因子って何か」「悪化因子(悪循環させるもの)ってどんなものがあるか」

などを伝えたいと思って作りました。「うつ病(MDD)」の人だけでなく「うつ状態」「適応障害」の人の回復にも参考に

なると思います。当院に来られる方は診察のついでに、感想や意見をいただけるとうれしいです。

私には医者以外の面がありますので、マンガの話になると喜びます・・。

外科医ネタをくださったE先生、ありがとうございました。

                                    2013.10.31     相澤雅子

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