<あとがき>                ホームへ

ミキとありさ(特にミキ)は、ずっと憂うつが続くのではなく、気分が高揚しているときと気分が落ち込んでる時を繰り返しています。

ただ双極性障害(躁うつ病)の診断基準を満たさない程度の気分の不安定さです。
でも本人は気分の差に苦しむし、周囲の人もちょっと困っている・・・このような若い人がよく精神科、心療内科のクリニックに訪れます。

日本の場合、おそらく、半分のクリニックでは「心理的、性格的な問題が大きいからカウンセリングでも受けなさい」と無投薬で帰され、半分のクリニックでは「とりあえず(双極性障害に適応のある)気分安定薬を飲んでください」と言われるでしょう。

薬は効けばいいけれど、効くか効かないかは飲んでみないとわかりません。副作用の懸念もあるし、いつまで服薬を続けるのか?妊娠の時にはどうするのか?という問題もあります。では他の治療法は?
日本うつ病学会の双極性障害のガイドラインでは、維持療法(再発予防)として
認知行動療法は薬物療法と併用すれば「推奨されうる」とされています。(他には対人関係や生活リズムの調整が推奨)。
双極性障害でなければガイドラインの対象外ですが、成長途上にある若い人の場合は(薬を使う使わないにかかわらず)、柔軟な考え方や行動を促進する認知行動療法は望ましいと思います。

古市さんはうつ状態、あるいはうつ病(ここではその定義は省略)の回復期にある人です。
急性のうつから回復しても、社会復帰できず、あるいは自信が回復せず慢性化するケースは多く見られます。古市さんのように、自分で運動(散歩)したり、グループセラピーに参加するなどのリハビリ努力も大切です。(うつからの復職[リワーク]に特化したデイケアを利用するのもお勧めです)

翔は自分に自信がなく、人間が怖い回避的な性格の大学生です(病名をつけるなら回避性パーソナリティ障害か対人恐怖か社交不安障害か)
彼のような場合、当然、薬だけでは治りません。人間の中で(グループセラピーでも趣味の仲間でもバイトでもNPO団体でもボランティアでも)、自信を育てていく必要があります。

認知行動療法はいろいろな疾患や問題に有効であり、グループセラピーは仲間の力も使えるパワフルなものです。この両者を合体させた集団認知行動療法は今後、発展が期待されます。
でもグループというのはやはりストレスを伴うもので、当院では治療者側も参加者も緊張しながらやってるので、このマンガの登場人物達みたいにすらすらしゃべる人はあまりいません・・。
でも、その緊張の先に、ドラマがあり、人生の章が開けていく・・そういうものだと思っています。
読んでいただいてありがとうございました。
                            平成25年5月      相澤雅子




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